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福島県の名山、安達太良山の豊かな好条件に、平成2年より作庭に取り組んでいます。
この地は、1945年終戦に伴い、開拓を目的として入植し、飢え、寒さと闘いながら開田を果たした土地という事でした。言い尽くせない耕土に対する情熱を感じながら、作庭を進めております。
当初、本宅新築に伴う修景計画でしたので、すでに一部用意されておる樹木、景石、そして既存の針葉樹林を念願に置き、花鳥風月を感じる回遊式池泉庭園としました。広大な敷地と、具合の良い高低差、そして、天水にも恵まれ、今日の姿を現しております。
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作庭を通して常々気配りした事は、無心で取り組み経験に頼り過ぎた固定観念は捨ててかかろう、概念を持たず違った角度からの発想を追求しようと努力しました。又、大径樹、巨石が多い中で、構想が定まらず色々と思い悩む時は、素材を知り尽くそうと努めました。素材の立場でじっと対峙すると、心が透通り、思いも掛けない好結果になるという”極限状態の無意識”を幾度も体験出来ました。
嫁を迎える思いやりで、一木・一草・一石にたずさわり、すべてに息吹を与えたいという心で取り組んでおります。
開拓した、大地に対する愛顧、周囲の深緑、そして、随所に配されておる、銘木銘石の生命力が、来園した方々に少しでも伝わり心和んで頂ければ幸いと思います。
(1)正門 前庭
入口正門は、借景をモチーフとしたうねり積みとし、入口は光悦寺垣で区切りとしております。石畳は、大判の御影石を大振りし、伊勢ゴロ太、ひき臼を要所に配しております。既存杉林を意識し台杉を配植しました。将来、正門として突き当たりに長屋門、築地塀を構築予定ですが、農振法により建築出来ず仮設的な修景としております。
(2)門 内庭
石畳正面に、九山八海、鶴亀の石組が目前に広がります。渓山一体に鳥の鳴く声が響き渡る仙峡、大波を受けて懸命に漕ぎ出す宝船を想定して取り組みました。景石は岩手県の前沢から産出しておる蛇紋石。伊勢ゴロ太は流紋、波紋、砂紋と青海波の表現です。カツラの大樹のパワーを感じ蹲踞に至ります。
(3)流れ 池泉
橋の上より左手の眺望は、遠景を消さない様に滝組みを低めにおさえ、湧き水と一滝落ちのふたつの滝を配しました。流曲は登り龍の激しさを追求しております。水量の確保と水質の改善はなされておりません。次に、池泉へと向かいます。ふた筋の流れが注がれ、満々と湛える水にススキを透かし、月が水面に映し出される景光も念頭に置いております。
(4)本邸
本邸入口左側のシナノキは青森県より移植した樹齢約500年の古木です。永い年月風雪にさらされ枝折られ、雷に打たれて空洞化が進み現在樹皮だけで生育しております。本邸は、平成9年春に新築されました。真南の方位とし、北に名山安達太良山が眺望できる景勝地です。大振りの信濃石のアプローチを渡って行くと、水琴窟の微音が心を和ませてくれます。水琴窟は、降り蹲踞とし音がこもる様に施行しました。
瓶底の水深を調整出来る工法としております。本邸より、池泉なども望める様、比較的オープンな修景としております。
食堂居間側に鎮魂石二石を配しております。戦後入植した、御両親が苦楽を共にした由緒ある大地、慎んで石を厳選しました。礎、挽臼、陽の小宇宙。
(5)四季の庭中心部
アカマツの銘木を中心に、松竹梅の祝いの庭としております。マツクイ虫の汚染に細心の注意をしております。アカマツ前の手水鉢は、二本松城にあった逸品です。兜鉢と命名しております。
(6)春の庭
桜、アヤメ、早春の草花を配し、ゆったり背伸びの出来るくつろぎの庭としております。周囲からも目線の高さで、桜の花を眺めたく春の庭のコーナーをこの地にしました。既存の桜を移植したものです。
(7)夏の庭
現地調達の御影石で明朗な流曲、穏やかな石組に心掛け、浅い留りの流れとしました。二体の観音像を安置しております。ひとつは、池泉奥に光背石を輝かす座像、そして安達太良山系を縮小した芝山、裾野にそびえる菩提樹のふところ抱かれた立像、慈悲のぬくもりを感じて頂けたらとの思いです。キンロバイの生け垣を挟んで、憩いの広場スペースを取ってあります。松林内外に休屋を建築し、春夏秋冬のパノラマを満喫出来るコーナーにする予定です。
以上、簡略ですがご説明とします。
”戦利の旅、一里残して半道なり、そして叉、千里”
根気強く、奥深い造園の道に精進する覚悟です。
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